2008年10月13日

定年うつ・昇進うつ:仕事一筋の男性に多い 長い目で見守って

 昇進や定年などの仕事や人生の節目に気持ちは落ち込み憂うつな気分に−−。こんな症状に悩む会社員が増えている。夏休み明けに症状が出始める「昇進うつ」や、仕事一筋の男性が陥りやすい「定年うつ」だ。回復には早めの受診と周囲の温かい見守りが必要だ。

 千葉県在住の男性(75)は2年前、40年以上続けた飲食店を閉じた。半年前に妻を亡くし、持病の腰痛も悪化していた。閉店2カ月後に長男(50)が異変に気づく。「明るく社交的だった父が急に口数が減りふさぎ込むようになった」。精神クリニックで軽いうつ状態と診断された。

 慶応大保健管理センター(東京都新宿区)の大野裕(ゆたか)教授は定年うつの特徴を「アイデンティティーだった仕事を失ったうえ、人間関係が減る不安がストレスを呼ぶ。仕事と自分を一体化してきた人ほど陥りやすい」と説明する。うつ症状と認知症の初期症状が似ていたり、併存することもあり、専門医の受診が必要だ。

 定年前にしておくといいことは−−。大野教授は「地域の仲間や家族関係、趣味、サークルなど一朝一夕にはできない人間関係を定年前から少しずつ築けば、滑り出しも順調になる」と言う。夫婦でも、ともに過ごす時間が急に増えると、ストレスを感じてしまう。だから、定年以前から2人で行動したり、体を動かす機会を増やすといいともいう。

 運動不足も要注意だ。ウオーキング、ジョギング、水泳−−。酸素を取り込むそんな有酸素運動を大野教授はすすめる。生活のリズムを保つためにも日中に体を動かすことは有効だ。

 「定年後の人生は20〜30年ある。1〜2カ月で何とかしようと無理せず、時間軸を年単位でとらえる。周りもゆったり見守ることが大切です」

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 昇進がうつの引き金になることもある。

 カウンセリングルーム「ヒューマンリエゾン」(東京都渋谷区)を主宰する臨床心理士の菊地章彦さんは指摘する。「仕事を一通り覚え、緊張が途切れたころが危険。企業では夏季休暇明けの7〜9月ごろに診断書の提出が増え、夏休みに入ったまま出社できないケースもある」。係長や主査など初めて指導的立場に就いた人たちが要注意だという。

 まじめで責任感が強く、弱音を吐かない−−。そんな人が昇進を引き金にストレスをためる。症状は▽不眠▽欠勤が増える▽集中力や食欲の減退▽仕事の能率悪化−−などで、早期発見がカギになる。周りが異変に気づき、本人や上司らが早めに産業医などに相談するのが望ましい。「会社に復帰しても一気に回復するのでなく、好不調の波を繰り返しながら調子を上げていくケースが多い。周囲は長い目で見守ってあげて」と菊地さん。

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 東京都立中部総合精神保健福祉センター(東京都世田谷区)は05年5月、うつ病を対象にした復職支援専門のプログラムを始めた。「うつ病での休職では、45%が復職後4年以内に再発すると言われている」とセンターの菅原誠・生活訓練科長は言う。背景には会社の復職支援制度が未整備だったり、会社と主治医が求める復職レベルの落差などもある。

 センターは原則半年以内の復職を目指し、08年5月までの3年間にコースを修了した165人のうち、自主退所などを除く144人が復職した。菅原科長は「スムーズな復職や再発防止には本人と主治医、職場の3者に中立的立場で対応できる機関が不可欠」と話す。

 ■こんな症状が2週間以上続く時は受診を

▽元気がなくなる

▽閉じこもりがちになる

▽毎日の生活に充実感がない

▽今まで楽しかったことが楽しくない

▽何をやるにもおっくう感がある

▽自分が役立たずに思える

▽食欲がない

▽眠れない

 =慶応大保健管理センター・大野裕教授作成

 (2008年10月12日 毎日新聞)


posted by ニック at 09:23 | TrackBack(0) | 労働 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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